電源ユニットは性能に直接関係するパーツではないため、選び方がよくわからず、適当に選んでしまいがちだ。しかし実際には、電源ユニットはゲーミングPCの心臓とも呼ばれるほどに重要なパーツだ。
そこでこの記事では、ゲーミングPCに搭載する電源ユニットの選び方を解説している。
ワット数の目安や計算方法、ワット数以外で見ておくべきところを紹介しているので、ぜひ最後まで見ていってほしい。
ゲーミングPCの電源ユニットとは?
電源ユニットはゲーミングPCの心臓とも呼べるパーツで、コンセントから来た電力を、CPUやグラボなどの各パーツに届ける役割を担っている。
当然、電源ユニットが不調を起こすと、ゲーミングPC全体の不具合としてあらわれる。十分な電力(血液)が行き渡らないからだ。
特にゲーミングPCは必要とする電力が多いため、不具合を避けるためにも、十分な容量・品質の電源ユニットを選ぶ必要がある。
ゲーミングPCの電源ユニットの選び方
- 消費電力の2倍のワット数を持つ電源ユニットを選ぶ
- 80PLUSやCybenetics認証のグレードに注目する
- コンデンサーの品質を確認する
- 冷却ファンに注目する
- 電源ユニットの規格・コネクタを確認する
- 着脱式の電源ユニットを選ぶ
- メーカーはさほど気にする必要はない
消費電力の2倍のワット数を持つ電源ユニットを選ぶ
一般的に、消費電力の1.5~2倍のワット数を持つ電源ユニットを選べば良いと言われている。ここではわかりやすさ重視で2倍とする。
電源ユニットの容量と消費電力が近い場合、十分な電力を供給できなくなる。安定した動作のために、電源ユニットの容量には余裕を持たせておくべきだ。
以下は主要なグラボとCPUの最大消費電力を示した表となる。
| グラボ | 最大消費電力(TGP) |
|---|---|
| RTX5090 | 575W |
| RTX5080 | 360W |
| RTX5070Ti | 300W |
| RTX5070 | 250W |
| RTX5060Ti | 180W |
| RTX5060 | 145W |
| RX9070XT | 304W |
| RX9060XT | 160W |
| CPU | 最大消費電力(TDP) |
|---|---|
| Ryzen9 9950X3D Ryzen9 9950X | 170W |
| Ryzen9 9900X3D Ryzen9 9900X Ryzen7 9850X3D Ryzen7 9800X3D | 120W |
| Ryzen7 9700X Ryzen5 9600X | 65W |
| Core Ultra9 285K Core Ultra7 265K Core Ultra5 245K | 125W |
| Core Ultra9 285 Core Ultra7 265 Core Ultra5 235 Core Ultra5 225 | 65W |
例えばRyzen7 9700X×RX9070XTの組み合わせであれば、最大消費電力は65W+304W=369Wだ。そこに50WほどはマザーボードやSSDの消費電力が加算されるため、総合で420Wほどになる。
そこで369Wの2倍と420Wの2倍を計算すると、750~850W程度の電源ユニットが必要というわけだ。
80PLUSやCybenetics認証のグレードに着目する
電源ユニットを選ぶ際には容量だけではなく、グレードも重要な指標となる。
グレードとは、コンセントから供給された電力を、どれほどの効率でPC用の電力に変換できるかだ。グレードが高いほど効率が良く、電力を無駄にせずに済む。
グレードを表すのは80PLUS認証とCybenetics認証の2つがあるが、定番なのは80PLUS認証だ。
80PLUS認証
| グレード | 負荷率20% | 負荷率50% | 負荷率100% |
|---|---|---|---|
| STANDARD | 80% | 80% | 80% |
| BRONZE | 82% | 85% | 85% |
| SILVER | 85% | 88% | 85% |
| GOLD | 87% | 90% | 87% |
| PLATINUM | 90% | 92% | 89% |
| TITANIUM | 92% | 94% | 90% |
80PLUS認証は、STANDARD~TITANIUMのグレードに分かれている。高グレードになるほど、電力の変換効率が良く、電力を無駄にせずに済む。
BTOショップでは、BRONZEやGOLDが主流だ。ハイクラスモデルには、PLATINUMのような高グレード電源が搭載されていることが多い。
おすすめはGOLDだ。GOLDより上の電源ユニットは高額になる一方で、変換効率の伸びはイマイチなので、割に合わない。
Cybenetics認証
Cybenetics認証は80PLUS認証と違い、電力変換効率だけでなく、静音性が評価の対象になる認証も用意されている。項目も多いため、80PLUS認証より基準が厳しくなっていると言える。
以下はCybeneticsのETA認証(電力変換効率)の基準を示す表だ。
| グレード | 変換効率 | 力率 | 5VSB変換効率 | 待機電力 |
|---|---|---|---|---|
| BRONZE | 82~85% | 0.950~ | 71%~ | ~0.25W |
| SILVER | 85~87% | 0.960~ | 73%~ | ~0.22W |
| GOLD | 87~89% | 0.970~ | 75%~ | ~0.19W |
| PLATINUM | 89~91% | 0.975~ | 76%~ | ~0.16W |
| TITANIUM | 91~93% | 0.980~ | 77%~ | ~0.13W |
| DIAMOND | 93%~ | 0.985~ | 79%~ | ~0.10W |
※5VSB変換効率とは、PCのスタンバイ時にUSBから取れる電力の効率を表す
色々記載しているが、とりあえず一番左の変換効率が重要だ。80PLUS認証と同じく、GOLDを選んでおけば問題ない。
次はCybeneticsのLANBDA認証(静音性)の基準を表す表だ。
| グレード | 騒音レベル | 目安 |
|---|---|---|
| STANDARD | 40~45dB | |
| STANDARD+ | 35~40dB | 図書館 |
| STANDARD++ | 30~35dB | |
| A- | 25~30dB | 郊外の深夜 |
| A | 20~25dB | |
| A+ | 15~20dB | ささやき |
| A++ | ~15dB |
STANDARDはともかく、A評価を貰っている電源ユニットは、静音性にかなり優れていると考えて良い。30dB以下、特に20dB以下の音はほとんど聞こえないレベルだ。
静音性にこだわりたいなら、CybeneticsのLANBDA認証を選ぶ基準にしよう。
コンデンサーの品質を確認する
日本製の105度電解コンデンサーを採用している電源ユニットを選ぼう。
コンデンサーとは、電気を蓄えて電圧を安定させる部品だ。一般的な85度電解コンデンサーより耐久性が高く、長持ちしやすい。
電源ユニットはPCの心臓ともいえる重要なパーツなので、信頼性の高い部品を採用しているかどうかを見ておきたい。
冷却ファンに注目する
| ファンのタイプ | 特徴 |
|---|---|
| 常時回転 | 特に高負荷時にはうるさいこともある。140mmのファンならマシになる。 最も安価な傾向にある。 |
| セミファンレス | 低負荷時にはファンが回転しない。 常時回転と比べると価格はやや高いが、現実的な選択肢。 |
| ファンレス | ファンが存在しないため、回転音がない。 高価で製品数が少なく、基本的に選択肢にならない。 |
静音性を重視したいなら、セミファンレスの電源ユニットをおすすめする。
併せて、80PLUS認証やCybenetics認証のグレードも気にしよう。グレードが高いほど発熱量が少なく、ファンの回転も少なくなるからだ。
電源ユニットの規格・コネクタを確認する
PCを自作する場合は、電源ユニットの規格やコネクタを確認しておく必要がある。
基本的にはATX規格を選べば良い
規格はサイズと思えば良い。主にATXとSFXの2種類の規格がある。
ミニタワーからフルタワーまで、ゲーミングPCで標準となっているのはATXだ。一方でSFXは、小型のゲーミングPC向けの規格となっている。
ちなみに同じATX電源でも、製品によって大きさが若干異なるため、使用するPCケースに入るかどうかをしっかりと確認しておこう。
コネクタの数を確認する
電源ユニットのコネクタは、種類によって完全に分かれていて、用途(接続できるパーツ)が決まっている。雑に選んでしまうと、特定のパーツとは組み合わせられないという事態に陥ってしまうのだ。
| コネクタ | ピン数 | 主な接続先 |
|---|---|---|
| メイン | 24,20+4 | マザーボード |
| ATX12V/EPS12V | 8 | CPU |
| PCI Express | 6+2 | グラフィックボード |
| SATA | 4 | SATA接続のSSD、HDD |
| ペリフェラル | 4 | IDE接続のHDD、光学ドライブ |
| FDD | 4 | FDD |
特にハイエンドグラボを搭載する場合は、多くのPCI Expressコネクタが必要になる場合がある。コネクタの確認は必須だ。
着脱式の電源ユニットを選ぶ
PCを自作する場合は、着脱式(フルモジュラー式)の電源ユニットを選ぶのをおすすめする。
着脱式は、電源ユニットとケーブルを分離させることができ、必要なケーブルだけを取り付けられる。無駄なケーブルがなくなるため、取り回しがかなり楽になるのだ。
メーカーはさほど気にする必要はない
マザーボードやグラボなどと違い、電源ユニットのメーカーはさほど重要ではなく、電源をメーカーで選ぶ人はあまりいない。
価格やデザイン、保証期間など、自分の要望に合うものを選べば良い。
ゲーミングPCの電源ユニットに関してよくある質問
なぜ消費電力の1.5~2倍の電源ユニットが必要なのか?
容量に余裕がある運用をすることで、安定した電力供給が可能になるからという理由の他にも、様々なメリットがある。
電力変換効率が良くなるから
80PLUS認証で見たように、電源ユニットは負荷率50%のときに最も変換効率が良くなる。
消費電力の2倍の電源ユニットを選んでおけば、負荷率50%を達成できるというわけだ。
ただし実際には、常に最大消費電力を使っているわけではないため、1.5~2倍というように幅がある。
静音性に優れるから
電源ユニットが余裕をもって稼働している場合、ファンの回転数が少なくなり、静音性に優れる。
PCゲームはゲーム音が大事になることも多いため、静音性は重要だ。
電源ユニットの劣化を遅くすることができるから
電源ユニットが余裕をもって稼働していて負荷が小さい場合、劣化を遅くすることができる。
仮に高負荷の場合、発熱量が多く、パーツが劣化しやすいというわけだ。
パーツの換装に対応しやすいから
自作erだけのメリットだが、電源ユニットの容量に余裕があれば、将来的なパーツの換装に対応しやすい。
パーツを換装する際は、今と同じ性能か、上の性能にすることが多い。性能が上がるということは、消費電力も上がる傾向にある。
余裕のある電源ユニットを選んでおけば、CPUやグラボを換装しても、電源ユニットはそのまま使える可能性が高いということだ。
電源ユニットの容量が多すぎても良いのか?
容量が多すぎて不具合が出ることはないが、無駄なのでおすすめはしない。
例えば、Ryzen7 9700X×RTX5060の組み合わせであれば、消費電力は250Wほどであり、500Wの電源で事足りる。(ラインナップ的に650Wくらいを選ぶことになりがち)
そこで1200Wの電源ユニットを採用しても、不具合が出たり電気代が高くなったりすることはないが、あまりにも無駄が大きすぎるのは言うまでもないだろう。
ゲーミングPCは月にどれくらいの電気代がかかるのか?
搭載しているCPUやグラボによって変わるし、どれくらいの出力で何時間利用するかによっても変わる。
あくまで目安にしかならないが、1日2時間、最大消費電力で使った場合の電気代は以下の通り。
| 構成 | 30日間の電気代 |
|---|---|
| Ryzen7 9700X×RTX5060 | 458.64円 |
| Ryzen7 9700X×RTX5070 | 687.96円 |
| Ryzen7 9800X3D×RX9070XT | 926.02円 |
| Ryzen9 9950X×RTX5080 | 1,157.52円 |
最大消費電力で何時間も使い続けることはまずないので、あくまで目安だ。
ゲーミングPCの電源はつけっぱなしで良いのか?
使わないときは普通にシャットダウンして良い。
エアコンと同じ感覚で、1時間使わない程度であればつけっぱなしで良いし、半日使わないのであればシャットダウンした方が良い。
HDDが主流だった頃は、電源のオンオフを繰り返すことで劣化すると言われていた。しかし今はSSDが主流なので、さほど気にする必要はない。
電源ユニットの寿命はどれくらいなのか?
電源ユニットの品質によるが、3~10年が寿命の目安だ。
基本的に、80PLUS/Cybenetics認証のグレードの高いものほど寿命が長い傾向にある。メーカーが品質に力を入れているからだ。
具体的な製品の寿命を知りたい場合は、保証期間を見ると良いだろう。例えば保証期間が10年なら、10年はもつ可能性が高いということになる。
PCケース付属の電源ユニットではダメなのか?
ダメではないが、そもそも電源ユニット付きのPCケースを選ぶ意味が薄いことが多い。
電源ユニット付属のPCケースは数がかなり限られるし、付属の電源ユニットは容量が少なかったり、品質が微妙だったりする傾向にある。
PC初心者であれば、主流ではないものを選ぶのはやめた方が良い。
まとめ:ワット数やグレードを見て、適切な電源ユニットを選ぼう
この記事では、ゲーミングPCの電源ユニットの選び方を解説した。
PC初心者は電源ユニットを軽視しがちだが、実はゲーミングPC全体に関わるほどに重要なパーツだ。ワット数だけでなく、グレードやファンなど、見るべき箇所はたくさんある。
高品質で自分に合った電源ユニットを選ぼう。

