ゲーミングPCにセキュリティソフトを導入するかどうかは重要な問題だ。
一昔前の「セキュリティソフトを入れるのが当たり前」という世代の人にとっては、ゲーミングPCにもセキュリティソフトを入れたほうが良いのでは、と考えるだろう。
しかし一方でセキュリティソフトは継続的に費用がかかり、ただでさえ高額なゲーミングPCの金額に上乗せされてしまうという悩みもある。
そこでこの記事では、ゲーミングPCにセキュリティソフトは不要であり、Windows標準機能がどれほど優秀なのかを解説する。
この記事を読めば、セキュリティソフト分のお金を浮かせることができ、他パーツを1ランクだけグレードアップさせることもできるかもしれない。
セキュリティソフトとは
セキュリティソフトとは、悪意あるマルウェアからPCやスマホを守るために導入するソフトのことだ。マルウェアとは、デバイスを攻撃して情報を盗むといった悪さをするソフトウェアの総称であり、「ウイルス」という名称に馴染みがある人が多いかもしれない。
PCやスマホはインターネットに接続して使用するという性質上、悪意のある攻撃を受ける可能性が常に付きまとっている。
警備員のような存在であるセキュリティソフトを導入することで、マルウェアからデバイスを守ることができる。反対にセキュリティソフトを導入していない場合、警備員がいないということであり、デバイスは無防備な状態となってしまう。
セキュリティソフトは、PCやスマホの防御力を高め、個人情報や資産を守るために必須の存在だ。
ゲーミングPCのセキュリティリスク
会社で使うPCと違い、個人のゲーミングPCには機密情報が入っていないことが多いし、大量のメールのやり取りなどもないため、そういった意味でのセキュリティリスクは低い。
しかしゲーミングPCにもクレジットカード情報などの個人情報が入っている。ゲーミングPCであってもマルウェアに攻撃されることで、資産を失うといった被害が出てしまう。
ゲーミングPCでありがちなマルウェアの感染経路は以下の通り。
- MOD導入によるセキュリティリスク
- ソフトダウンロードによるセキュリティリスク
- ゲームダウンロードによるセキュリティリスク
いずれも、データやファイルを自分のゲーミングPCに入れるときのセキュリティリスクとなる。
MOD導入によるセキュリティリスク
MODとはゲームの改造データのことであり、主にオフラインプレイにおいて個人で楽しむために導入される。マインクラフトなど、一部のPCゲームではMODの導入が当たり前に行われている。
MODは個人が開発したデータなので、セキュリティリスクが高い。開発者に悪意があれば、MODにマルウェアを仕込むことができる。
信頼性の高い配布サイトで提供されている人気MODであれば問題ないはずだが、怪しいサイトからMODをダウンロードするのは避けたほうが良い。
ソフトのダウンロードによるセキュリティリスク
ゲーミングPCでソフトをダウンロードする際、各公式サイトを利用することになる。スマホのようにApp StoreやGoogleストアという1つのプラットフォームを利用するわけではないのだ。
定番で信頼性の高いソフトであればリスクは低いが、知名度の低いソフトをダウンロードする場合はリスクが高くなる。特に個人が開発しているようなソフトの場合、マルウェアが仕込まれている可能性があると言える。
特に初めてのゲーミングPCの場合、ついつい色々なソフトを入れてみたくなることもあるが、信頼性が高く、絶対に必要なソフトだけをダウンロードするようにしよう。
ゲームのダウンロードによるセキュリティリスク
個人や小規模企業が開発しているマイナーなゲームの場合、ゲーム自体にマルウェアが仕込まれている可能性がある。
ゲームの開発ツールをハッキングされてマルウェアを仕組まれることで、開発者も気づかないうちにマルウェア入りゲームがリリースされるケースがあるのだ。
実際2019年には、韓国やタイのゲーム開発会社が攻撃の対象となり、マルウェア入りのゲームがリリースされた事件があった。
大手企業のゲームであればリスクは低いが、小規模開発のゲームをリリース直後にダウンロードするのはセキュリティリスクがあることを知っておきたい。
ゲーミングPCにセキュリティソフトが不要な理由
ゲーミングPCにセキュリティソフトが不要な理由は、Windowsに標準搭載されている「Windowsセキュリティ」で十分な防御力だからだ。
Windowsセキュリティの防御力の高さは、第三者機関が行うテストによって証明されている。
例えば第三者機関「AV-Comparatives」が指定した、2024年Approved Windows Security Product Awardを獲得した16のソフトに、Windowsセキュリティは入っている。
›AV-Comparatives Summary Report 2024(外部サイト)
2015年以前のWindowsセキュリティは防御力が低く、追加の有料セキュリティソフトが必須だと言われていたが、最近のWindowsセキュリティは非常に優秀であることが客観的に証明されているのだ。
Windowsセキュリティの機能を紹介
Windowsセキュリティには以下の7つの機能が搭載されている。
- ウイルスと脅威の防止
- アカウントの保護
- ファイアウォールとネットワーク保護
- アプリとブラウザーコントロール
- デバイスセキュリティ
- デバイスのパフォーマンスと正常性
- ファミリーのオプション
ウイルスと脅威の防止
ユーザーがセキュリティソフトに期待するセキュリティ機能であり、悪意に対してデバイスを保護してくれる。
定期的にデバイスをスキャンしてマルウェアの検出と排除を行ったり、悪意のあるアプリがPC内のデータを書き換えられないようにしたりできる。
アカウントの保護
Windows Helloでは、PINだけでなく顔認証や指紋認証によるデバイス保護を行うことができる。
ペアリングしたデバイスが一定距離から離れると自動的にロックする「動的ロック」の設定も行える。
ファイアウォールとネットワーク保護
外部からの不正なアクセスを防ぐ「ファイアウォール」の設定ができる。アプリごとにファイアウォール経由の通信を許可するかどうかの設定も可能だ。
アプリとブラウザーコントロール
信頼性が低く、悪意のある可能性があるアプリやファイル、Webサイトからデバイスを保護する機能だ。
OSやアプリの脆弱性を突いた「エクスプロイト攻撃」からデバイスを守る、エクスプロイトプロテクションの設定もできる。
デバイスセキュリティ
デバイスに組み込まれているセキュリティの設定ができる。
OSの中核であるカーネルを保護する「コア分離」などの設定が可能だ。
デバイスのパフォーマンスと正常性
「記憶域容量(ストレージ容量)」「アプリとソフトウェア」「Windowsタイムサービス」という項目で、デバイスの正常性をチェックできる。
ファミリーのオプション
子供に対するアクセス制限を設定できる。PCを利用できる時間の設定や、利用のレポートを週単位で取得することができる。
有料セキュリティソフト導入のメリット・デメリット
Windowsセキュリティは優秀なセキュリティソフトではあるが、有料セキュリティソフトにもそれぞれ特徴がある。
有料セキュリティソフトのメリット・デメリットを知ることで、Windowsセキュリティと有料セキュリティソフトのどちらを選ぶかの判断材料を増やすことができる。
有料セキュリティソフト導入のメリット
有料セキュリティソフト導入のメリットは以下の通り。
- 総合的なセキュリティ対策が可能
- サポート体制が充実していることが多い
- 安心を買える
総合的なセキュリティ対策が可能
有料セキュリティソフトは、迷惑メールやフィッシング詐欺、ネットバンキング保護など、広範囲のセキュリティ対策に対応している。
Windowsセキュリティでは対応できないタイプの悪意からもデバイスを守ることができる。
サポート体制が充実していることが多い
有料セキュリティソフトを導入することの最大のメリットは、万が一のときのサポートを受けられることだ。
マルウェアへの防御力に関しては、定番のソフトであれば無料ソフトも有料ソフトもさほど違いがない。しかしサポートに関しては、有料セキュリティソフトが大幅にリードしている。
安心を買える
いくら「無料のWindowsセキュリティで十分」と説明されても、「無料ソフトより有料ソフトのほうが安心感がある」と感じるのは理解できる。有料セキュリティソフトを買うことは、安心を買うことに繋がる。
有料セキュリティソフト導入のデメリット
有料セキュリティソフト導入のデメリットは以下の通り。
- ゲーミングPCのパフォーマンスが下がる
- ゲームとソフトの相性問題が起きることがある
- 費用が継続的にかかる
ゲーミングPCのパフォーマンスが下がる
基本的にセキュリティソフトは常に動作しているものなので、常にCPUのリソースを消費している。有料セキュリティソフトの中には、強力故に動作が重いものもあり、動作の軽さが求められるゲーミングPCには不向きなことがある。
ゲームとソフトの相性問題が起きることがある
ゲームのコピー防止機能をマルウェアだと誤検出してしまうケースや、特定のゲームを起動するとセキュリティソフトの警告画面が出てプレイできなくなるというケースもある。
実際、PCゲームの最大手プラットフォームであるSteamの公式サイトには、セキュリティソフトがゲームを妨げる可能性があると記載されている。
費用が継続的にかかる
有料セキュリティソフトは、メーカーやプランにもよるが、安くて年間5,000円ほどかかる。
年間5,000円で安心を買えると思えば安いが、毎年毎年積み重なると無視できない額となる。
ゲーミングPCのセキュリティ対策で重要なこと
セキュリティソフトにすべてを任せるだけでなく、ユーザー自身が気を付けることで、セキュリティリスクを下げることができる。
ここでは、ユーザー自身ができるセキュリティ対策で重要なことを紹介する。
Windowsや各ソフトを最新に保つ
Windowsや各ソフトは定期的にアップデートを行っていて、アップデート内容にセキュリティ対策が含まれることがある。
最新のバージョンにアップデートすることで、最新のマルウェアからゲーミングPCを守ることができる。
ただし、最新バージョンのWindowsは安定性に欠けることがあり、ブルースクリーンやゲームの不安定化などの不具合を起こすことがある。アップデートをする前に、不具合情報を調べておきたい。
ブラウザのセキュリティに気を付ける
マイナーなブラウザにはセキュリティリスクが潜むケースがあるため、定番のブラウザを使うようにすべきだ。
ただし定番のブラウザであっても、拡張機能には注意したい。拡張機能は、ブラウザに導入することで、標準搭載されていない機能を使えるようになる便利なプログラムだ。
問題なのは、提供元が拡張機能にマルウェアを仕込んでいるケースがあることや、拡張機能に脆弱性が存在するケースがあることだ。
便利機能をPCに入れるということは、それだけセキュリティリスクが高まることに繋がると知っておきたい。
不審なURLをクリックしない
マルウェアに感染する原因の1つは、URLをクリックしてしまうことだ。ファイルを開くことでマルウェアに感染したり、URL先のサイトで個人情報を入力してしまうことで情報を盗まれたりする。
例えば金融機関を騙ったメールで「不正な取引があったため、一時的にアカウントをロックしました。アカウント情報をこちらから確認してください」という手法は定番だ。
メールやSNSのDMで送られてくるURLはクリックしない、そもそも身に覚えのないメールは開かないと心がけることが重要だ。
強力なパスワードを設定する
ゲーミングPCではゲームアカウント、Microsoftアカウント、Googleアカウントなど、様々なアカウントを利用している。それぞれで強力なパスワードを設定しておくことで、セキュリティを高めることができる。
パスワードを設定する際は以下の2つのポイントを押さえたい。
- 大文字・小文字・数字・記号の4種類を含めた上で10桁以上にする
- よく使われる一般的な文字列(passwordなど)を含めない
これらは内閣サイバーセキュリティセンター(外部サイト)が推奨する、セキュリティを高めるパスワード設定だ。
例えば、数字のみの10桁パスワードは40分ほどで突破されてしまうが、大文字・小文字・数字・記号の10桁パスワードは突破するのに6万年かかるとも言われている。
複雑で長いパスワードを設定することで、突破されるリスクを大きく下げることができる。
セキュリティソフトに関するよくある質問
セキュリティソフトに関するよくある質問と回答をまとめた。
- Windowsセキュリティだけで本当に安心できるのか?
- BTOではお試し版セキュリティソフトが入ってるけど?
- セキュリティソフトを入れるとゲーミングPCが重くなるのか?
- セキュリティソフトを複数入れると防御力は上がるのか?
- Windowsセキュリティ以外の無料ソフトはどうなのか?
Windowsセキュリティだけで本当に安心できるのか?
個人的には、Windowsセキュリティだけで安心できると思っている。現に第三者機関によってWindowsセキュリティの防御力は証明されているからだ。
そもそもマルウェアを100%防げるセキュリティソフトは存在せず、有料のセキュリティソフトを導入したとしても、マルウェアの被害に遭う可能性は0にはできない。そういった意味でも、Windowsセキュリティで十分だと考えている。
BTOではお試し版セキュリティソフトが入ってるけど?
BTOのゲーミングPCには、30日間のお試し版セキュリティソフトが入っていることが多いため、「やっぱり有料セキュリティソフトが必要なのでは?」と思う人もいるだろう。
しかしBTOのゲーミングPCにお試し版が入っているのは、BTOとソフト開発会社との契約によるものだ。お試し版終了後に本契約をした場合、ソフト開発会社からBTOにマージンが入るようになっている。
Windowsセキュリティの防御性能が向上したことで、有料ソフト開発会社はあの手この手で利益を上げようとしているのだ。
セキュリティソフトを導入するとゲーミングPCが重くなるのか?
基本的にセキュリティソフトは常に動作しているため、PCの動作は多少重くなる。どれほど重くなるかは使用するセキュリティソフトによるが、少なくとも軽くなることはない。
2024年のAV-Comparativesのテストによれば、「マカフィー」「カスペルスキー」「ESET」は動作が軽い。
もしWindowsセキュリティ以外のセキュリティソフトを導入する場合は、ゲームの妨げにならないように、軽いソフトを選びたい。
複数のセキュリティソフトを導入すると防御力は上がるのか?
基本的に、複数のセキュリティソフトを導入すると、逆に防御力が下がる。お互いのソフトが干渉し合い、正しく動作しなくなるからだ。
例外として、常駐型ソフト1つと非常駐型ソフト1つであれば、お互いに干渉することがないため、防御力を高めることができる。常駐型ソフトとは常にPCを監視しているタイプのソフトであり、非常駐型ソフトとは手動でスキャンを行ったときだけ動作するタイプのソフトだ。
常駐型ソフトと非常駐型ソフトを使うことで、片方が見逃してしまったマルウェアをもう片方が見つけてくれる可能性があるため、防御力が上がる。
PCに常駐型ソフトを入れると、Windowsセキュリティは自動的にオフになる。
Windowsセキュリティ以外の無料ソフトはどうなのか?
Windowsセキュリティ以外の無料ソフトを導入する意味はない。
基本的に無料ソフトはWindowsセキュリティと同じような特徴を持っているからだ。標準搭載のWindowsセキュリティをわざわざ無効化して、同じような無料ソフトを入れる必要性はない。
まとめ:セキュリティソフトを賢く選んで、快適なゲームライフを送ろう
この記事では、ゲーミングPCのセキュリティ対策はWindowsセキュリティで十分だということを解説した。
- Windowsセキュリティは有料セキュリティソフトと同等の防御力を持つ
- 有料セキュリティソフトにもメリットはあるが、継続的に費用が掛かるというデメリットは無視できない
- マルウェアを100%防げるセキュリティソフトは存在しないので、自分でマルウェアを入れないようにする努力や、セキュリティを高める施策が重要
個人的にはWindowsセキュリティで十分だと考えているが、各人が自分に合ったセキュリティソフトを選ぶことで、無駄にセキュリティを心配したり、無駄な費用を使ったりしなくて済む。
ゲーミングPC選びも同様であり、自分に合ったゲーミングPCを選ぶことで、無駄な出費をしなくて済む。BTOであれば、自分に合った構成のゲーミングPCを簡単に選べるので、特にPC初心者はBTOの利用をおすすめする。
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