グラボはゲーミングPCの性能を決めるパーツの1つだが、どれを選べば良いのか迷う人は多い。実際、ハイエンドグラボを選べば良いというわけではないし、価格だけを重視してエントリークラスを選べば良いというわけでもない。
自分にとって過不足のない性能のグラボを選ぶことが重要なのだが、PC関連は難しい専門用語が多いこともあり、なかなか難しい。
そこでこの記事では、ゲーム用グラボの選び方を、最低限の専門用語だけを使って初心者向けに解説する。
性能の見方から、自分のゲームスタイルに合わせたおすすめグラボまで紹介するので、この記事を読めば自分にピッタリのグラボを見つけることができる。
グラフィックボード(グラボ)とは
グラボは映像を映し出すパーツであり、ゲームのような美麗グラフィックを描画する際に重要になる。特に3Dグラフィックスを多用するゲームでは、美しい映像を描画したり、滑らかに表示したりするためにグラボが必須だ。
WQHDや4Kのような高解像度ではグラボの重要度が特に高い。グラボの性能が不足している場合、まともにプレイできなかったり、そもそも起動しなかったりする。eスポーツ系ゲームをフルHD低設定でプレイする場合など、負荷が軽い場合はグラボの重要度が下がり、CPU性能のほうが重要になる。
PCによっては、CPUに簡易的なグラフィック機能(内蔵グラフィックス)が搭載されている。しかし内蔵グラフィックスは文書作成や動画視聴などの基本的な作業向けであり、PCゲームを快適に動作させるには圧倒的に力不足だ。
グラボ性能の見方を解説
グラボを選ぶ前に、各グラボの性能について知る必要がある。
グラボの性能は以下の2つ方法で見ることができる。
- 型番を見る
- ベンチマークスコアを見る
型番を見る
型番の見方を知っておけば、型番からおおよその性能を把握できる。
以下はAMD Radeonと、NVIDIA GeForceのグラボの型番を記したものだ。
| クラス | AMD Radeon | NVIDIA GeForce |
|---|---|---|
| ハイエンドクラス(90) | – | RTX5090 |
| ハイクラス(80) | – | RTX5080 |
| ミドルハイクラス(70) | RX9070XT | RTX5070Ti |
| ミドルクラス(70) | RX9070 | RTX5070 |
| エントリークラス(60) | RX9060XT | RTX5060Ti |
| エントリークラス(60) | RX9060 | RTX5060 |
| ローエンドクラス(50) | – | RTX5050 |
基本的には、エントリークラス~ミドルハイクラスの中から選ぶことになる。ローエンドクラスは性能が低すぎるし、ハイクラス以上は過剰すぎるからだ。
ベンチマークスコアから性能を知る
ベンチマークスコアを見れば、型番からは分からない性能差を知ることができる。
ベンチマークスコアとは、3DMarkのような専用ソフトを使って、グラボに負荷をかけた際の処理能力を数値化したものだ。性能を数字として見ることができるため、グラボ同士の比較検討に役に立つ。
ただしベンチマークスコアはあくまで目安だ。測定環境や使用するソフトによって数値は変動するし、実際のゲームでのパフォーマンスは、ゲームの最適化具合にも左右される。苦手なゲーム、得意なゲームがあるのだ。
とはいえベンチマークスコアはグラボの平均的な力関係を見るのに便利であり、よく使われる指標となっている。
【4ステップ】ゲーム用グラボの選び方
自分に合ったグラボを選ぶための具体的なステップを解説する。
- プレイしたいゲームを決める
- 目標の解像度とフレームレートを決める
- 予算を決める
- 他のPCパーツとのバランスを確認
ステップ1:プレイしたいゲームを決める
理想としては、プレイしたいゲームを決めておこう。同じグラボでもゲームによって出せるパフォーマンスが大きく異なるからだ。「フルHD向けのRTX5060を選んだけど、VRAM不足でプレイできない」といった事故を防げる。
現時点でプレイしたいゲームが決まっていない場合も焦る必要はない。特定のゲームを基準にしなくてもグラボ選びは可能だ。
というのも、性能について神経質になりすぎる必要はない。最大手PCゲームプラットフォームであるSteamのデータによれば、フルHD向けエントリークラスのグラボを使用している人が圧倒的に多い。つまり多くの人は、エントリークラスのグラボで十分に遊んでいるというわけだ。
ステップ2:目標の解像度とフレームレートを決める
プレイしたいゲームが決まっている場合は、目標の解像度とフレームレートを決めよう。解像度が高くなるほどフレームレートは低くなる。eスポーツ系ゲームの場合はフルHD144fps/240fps、グラフィック重視のゲームの場合はフルHD以上で60fpsが目安だ。
「〇〇(ゲーム名) グラボ」などで調べれば、ベンチマークをしてくれているサイトやYouTubeが出てくる。
プレイしたいゲームが決まっていない場合は、解像度だけで良い。フルHD・WQHD・4Kのどの解像度でゲームをプレイしたいかを決めよう。
解像度:画面のきめ細やかさ
解像度とは画面のきめ細やかさ、画面を構成するドットの数だ。解像度が高いほど細かい描画が可能なので、きれいな映像となる。
主な解像度はフルHD・WQHD・4Kの3種類だ。
| 解像度 | 説明 |
|---|---|
| フルHD(1920×1080) | 最も一般的な解像度。エントリークラスのグラボでも快適に動作させやすい。フレームレートが重要になるeスポーツ系ゲーム向け。 |
| WQHD(2560×1440) | フルHDより細かい描画が可能。手が出せる範囲のグラボ価格で実現できるため、人気上昇中。きれいさが重要になるRPG系ゲーム向け。 |
| 4K(3840×2160) | WQHDより細かい描画が可能。高額なグラボが必要になるため、一部のマニア向け。 |
基本的にはフルHDで問題ないが、映像が売りのゲームをプレイしたい場合はWQHDもおすすめだ。WQHDはグラボやモニターの価格が比較的安く、手が届きやすい。
4Kに関しては映像美は凄まじいが、グラボやモニターの価格が非常に高いため、PC初心者におすすめできるものではない。
フレームレート(fps)
フレームレートとは1秒間に描画できる画像の枚数のことだ。パラパラ漫画をイメージすればわかりやすいが、フレームレートが高いほど滑らかな映像になる。
目安となるフレームレートは60fps、144fps、240fpsの3種類だ。
| フレームレート | 説明 |
|---|---|
| 60fps | eスポーツ系ゲームでは最低限の数値。 最高設定のRPG系ゲームで目指したい数値。 |
| 144fps | eスポーツ系ゲームでは定番の数値。画質設定を下げることで達成しやすい。 RPG系ゲームではやや過剰な数値。 |
| 240fps | eスポーツ系ゲームでは、競技シーンにおいて定番の数値。 RPG系ゲームでは必要ない数値。 |
eスポーツ系ゲームをプレイしたいなら144fps以上を出せるグラボを選び、RPG系ゲームをプレイしたいなら最高設定で60fpsを出せるグラボを選びたい。
ステップ3:予算を決める
グラボはPCパーツの中でも最も高額なパーツであり、選んだグラボによってPC全体の価格がおおよそ決まる。例えば「予算15万円で、4KでゲームできるPCが欲しい」という要望は叶えられない。
以下の表は、エントリー~ハイエンドクラスまでの現在主流なグラボだ。
| 用途 | グラボ価格 | 搭載PCの価格 | |
|---|---|---|---|
| RTX5090 | 4K | 39.38万円 | 65万円~ |
| RTX5080 | 4K | 19.88万円 | 40万円~ |
| RX9070XT | WQHD~4K | 11.30万円 | 25万円~ |
| RTX5070Ti | WQHD~4K | 14.98万円 | 30万円~ |
| RX9070 | WQHD | 10.38万円 | 24万円~ |
| RTX5070 | WQHD | 10.88万円 | 25万円~ |
| RX9060XT | WQHD(16GB版) フルHD(8GB版) | 6.5万円(16GB版) 5.50万円(8GB版) | 15万円~ |
| RTX5060Ti | WQHD(16GB版) フルHD(8GB版) | 7.98万円(16GB版) 6.98万円(8GB版) | 17万円~ 16万円~ |
| RTX5060 | フルHD | 5.58万円 | 15万円~ |
※搭載PCの価格は、あくまで目安。BTOや細かい構成によって大きく変動する
欲しい性能と予算を見比べながら、妥協が必要になる場合、性能と予算のどちらを妥協するかを決めよう。筆者のおすすめとしては、性能の妥協はしない方が良い。出費が多少増えてもまた稼げば良いだけだが、性能を妥協するとずっと後悔が続くからだ。
ステップ4:他のPCパーツとのバランスを確認
BTOでゲーミングPCを購入する場合は何も気にすることはない。そのため特にPC初心者には、BTOの利用をおすすめしている。
›【これで完璧】初心者でも失敗しないBTOゲーミングPCの選び方を徹底解説
自作する場合は、パーツ同士の相性問題に気を付ける必要がある。高性能なグラボを搭載したとしても、他のパーツが低性能だと、グラボが十分に性能を発揮できなくなる「ボトルネック」という現象が起きるのだ。
例えば極端に古いCPUを利用する場合、高性能グラボの足を引っ張ってしまい、グラボが性能を発揮できない。他にも、高性能グラボは消費電力が大きいため、大容量の電源ユニットが必要になる。ボトルネックとは言わないが、PCケースによっては大型のグラボを物理的に収納できない。
PCパーツには様々な相性問題があるため、PCを自作する場合は注意が必要となる。
解像度別おすすめグラフィックボード
| 解像度 | おすすめグラボ |
|---|---|
| フルHD | RX9060XT |
| WQHD | RX9070XT |
| 4K | RX9070XT, RTX5080 |
フルHD向けのRX9060XT
フルHD向けのグラボには、RTX5060Ti, RTX5060, RX9060XT, RX9060があるが、その中ではRX9060XTがゲーム向けグラボとして最もおすすめだ。
おすすめの理由は、最もコスパに優れ、価格自体も競合のRTX5060Tiと比べて安いからだ。
エントリークラスのゲーミングPCの場合、PC全体の価格が15~20万円程度なので、1万円の差が非常に大きい。コスパに優れるRX9060XTは、他より圧倒的におすすめだ。
RX9060XTにはVRAM16GB版と8GB版とがあるが、フルHD向けであれば8GBでも問題ない。ただ、16GBは汎用性が高いし、BTOでは16GB版が主流なので、16GB版をおすすめする。
WQHD~4K向けのRX9070XT
RX9070XTは基本的にはWQHD向けのグラボだが、4Kにも対応可能な強さがある。
RX9070XTの競合はRTX5070Tiだが、ゲーム用途ではRX9070XTのほうが優れている傾向にある。価格もRTX5070Tiより数万円レベルで安いので、圧倒的にRX9070XTをおすすめする。
RX9070XTを扱っているBTOも多く、多くの構成が用意されているため、自分に合ったゲーミングPCを見つけられるはずだ。
›RX9070XT搭載のBTOゲーミングPC紹介&ゲーム性能のベンチマーク
4K向けのRTX5080
高い4K性能を求めるなら、RTX5080がおすすめだ。RX9070XTより4K適性が高いため、ほとんどのゲームを4Kの美麗グラフィックで楽しめる。
1ランク上のRTX5090であればさらに高い4K性能が手に入るが、さすがに高額すぎる。グラボだけでRTX5080より20万円ほど高く、BTOの構成全体だと25万円ほど高額になる。
RTX5090をゲームだけに用いるのは無駄が大きすぎるという点から見ても、4KゲーミングであればRTX5080がおすすめだ。
›RTX5080搭載のBTOゲーミングPC紹介&ゲーム性能のベンチマーク
グラボ選びに関してよくある質問
本当にグラボは必要なの?
PCでゲームをしたいならグラボは必須だ。グラボは映像処理に関するスペシャリストであり、3Dグラフィックを描画できる。一般にPCゲームと呼ばれるものは3D空間を歩き回るようなゲームなので、グラボがないとまともに動作しない。
以下は、エントリークラスのグラボ(RTX4060)と、一般的なPCに内蔵されているグラフィック機能の性能差を示したものだ。
| RTX4060(グラボ) | Intel UHD Graphics 770(内蔵) | |
|---|---|---|
| Fortnite(パフォーマンスモード) | 450fps以上 | 100fps前後 |
| Cyberpunk2077 | 60fps以上(1080p/最高設定) | 30fps以下(720p/低設定) |
非常に動作が軽いFortnite(パフォーマンスモード)でも、内蔵グラフィックは100fps前後であり、144fpsにも届いていない。動作が重いCyberpunk2077では、解像度を720pに落とし、画質を低設定にしても30fpsに満たない。
内蔵グラフィックは、Fortnite(パフォーマンスモード)で100fpsしか出ないため、一般的な他のゲームをまともにプレイすることはできない。ゲームをしたいならグラボが必要だ。
NVIDIAとAMDの違いは?
ゲーム用グラボは、NVIDIAのGeForceと、AMDのRadeonが主流だ。両者の違いは以下の通り。
- NVIDIAのほうが圧倒的にシェアが高い
- ゲーム用途ではAMDのほうが、コスパまたは性能で優れている
- クリエイティブ用途ではNVIDIAが優れている
2025年10月現在であれば、ゲーム用途でNVIDIAを選ぶ意味はほぼないと思って良い。NVIDIAを選ぶのは、AMDがカバーしていないハイクラス以上の性能を求める場合くらいだ。
エントリークラスのグラボは将来性がないって聞いたけど、選んで大丈夫なの?
性能へのこだわりが強い自作界隈では、「エントリークラスのグラボは選ぶ価値がない」と言われている。しかし現実的には、エントリークラスのグラボでも十分すぎる性能だ。
Steamのデータによれば、エントリークラスのグラボを使用している人が圧倒的に多く、中には型落ちのグラボを使用している人もいる。しかしそれでも、画質を下げるなどの対策をすれば十分快適にプレイ可能だ。
使用者の多いエントリークラスのグラボで全くプレイできないゲームが発売されることはなく、最高画質設定にこだわらなければエントリークラスのグラボで十分なのだ。
まとめ:自分の目的に合ったグラボ選びをしよう
この記事では、ゲーム用グラボの選び方について、初心者向けに解説した。
- グラボは映像やフレームレートに関わる重要パーツ
- 型番やスペック表、ベンチマークスコアを見ることで、グラボのおおよその性能を知ることができる
- グラボ選びの4ステップ:「プレイしたいゲームを決める」「目標の解像度とフレームレートを決める」「予算を決める」「他のPCパーツとのバランスを確認」
- フルHDならRX9060XT、WQHDならRX9070XT、4KならRX9070XTかRTX5080がおすすめ
正しいグラボ選びをすることで、自分の用途にとって必要十分な性能を選ぶことができ、無駄がなくなる。自分にピッタリなグラボを選んで、快適なゲームライフを送ろう。
BTOを利用すれば、グラボ以外のパーツにおいても自分に合った構成のゲーミングPCを見つけやすい。特にPC初心者にはBTOを利用をおすすめする。
›【これで完璧】初心者でも失敗しないBTOゲーミングPCの選び方を徹底解説





