PC初心者にとって、グラボの型番は呪文か何かにしか思えないだろう。
しかもここ最近になって、NVIDIA GeForceだけでなく、AMD Radeonも勢力を伸ばしてきている。全く同じ命名規則であれば良いが、若干違うためややこしさが2倍になっている。
そこでこの記事では、AMD製Radeonグラボの型番について解説する。
この記事を読めば、Radeonに対する抵抗感が消え、NVIDIAとAMDの両方から自分に最適なグラボを選べるようになる。
AMD製Radeonグラボの型番の意味や見方を解説

例えばRX9070XTの場合、「RX」「9」「070」「XT」の4つに分解できる。構造的にはNVIDIAのGeForceと同様だ。
| AMD | 製造メーカー。 グラボ業界は、NVIDIAとAMDの2企業が市場を占めている。 |
|---|---|
| Radeon | ブランド。気にする必要はない。 NVIDIAで言うところのGeForce。 |
| RX | シリーズ。気にする必要はない。 |
| 9 | 世代。 Radeon RX内での世代を表す。数字が大きいほど新世代で高性能な傾向。 |
| 070 | グレード。 同世代における序列。数字が大きいほど高グレードで高性能な傾向。 |
| XT | 接尾辞。何もつかない場合(無印)もある。 性能の序列は、無印<XT<XTX。 |
Radeonには歴史があり、古いグラボは型番の命名規則が異なる。しかし古くて誰も選ばないようなものを解説しても意味がないため、比較的新しいグラボに限定している。
上一桁の数字は世代を表す
| 番台(発売開始の年) | グラボの例 |
|---|---|
| RX9000シリーズ(2025年) | RX9070XT, RX9060XT |
| RX7000シリーズ(2022年) | RX7900XTX, RX7800XT |
| RX6000シリーズ(2020年) | RX6950XT, RX6700 |
| RX5000シリーズ(2019年) | RX5700XT, RX5600 |
上一桁の数字が大きいほど新しい世代だ。下三桁が同じであれば、上一桁を見るだけで性能の優劣が分かる。(例:RX7700XT > RX6700XT)
新しい世代が発売されると、古い世代は徐々に販売終了となる。古い世代のグラボを選ぶ意味は薄い。
特にRadeonの場合は、新世代を選んだほうが旨味が多い。というのも、Radeonが評価され始めたのは、RX9000シリーズが発売されてからだからだ。RX7000シリーズ以前の過去のグラボを選ぶくらいなら、過去のNVIDIA GeForceを選んだ方が良い。
RX8000シリーズは存在しない。元々RX8000シリーズとして発売されるはずだったものが、RX9000シリーズとして発売されたからだ。
どうやら、CPUと型番を合わせるための処置らしい。(当時の最新CPUはRyzen9000シリーズ)
下三桁の数字はグレードを表す
下三桁の数字は、同世代内でのグレードを表す。数字が大きいほどグレードが高い。例えばRX7000シリーズであれば、RX7900XT > RX7800XT > RX7700XT > RX7600XTとなる。
RX9000シリーズの場合
| グレード | 性能 | グラボの例 |
|---|---|---|
| 70 | ミドルクラス | RX9070XT, RX9070 |
| 60 | エントリークラス | RX9060XT, RX9060 |
RX9000シリーズではRX7000シリーズ以前と命名規則が変わり、NVIDIA GeForceと同じ形式になった。性能に関してもNVIDIAと対応しているため、比較検討がしやすくなっている。
例えばRX9000シリーズは、NVIDIAのRTX5000シリーズに対応している。「RX9070の競合がRTX5070」といったイメージだ。
AMDは、超ハイエンド帯ではNVIDIAと戦わない戦略を取っている。NVIDIAのRTX5090やRTX5080といった超高性能グラボに対応するグラボを出さず、多くのユーザーが求めているエントリー~ミドルクラスにおいて良いものを出そうという考えだ。
RX7000シリーズ以前の場合
| グレード | 性能 | グラボの例 |
|---|---|---|
| 900 | ハイエンドクラス | RX7900XTX |
| 800 | ハイクラス | RX7800XT |
| 700 | ミドルクラス | RX7700XT |
| 600 | エントリークラス | RX7600XT |
| 500 | ローエンドクラス | RX6500XT |
RX7000シリーズ以前における、Radeon内での序列は以上の通りだ。あくまでRadeon内での話なので、型番だけではNVIDIAと比較できない。
稀に、RX6950XTのような、下二桁が00ではないグラボもある。これは、RX6900XTより高性能なグラボであることを表す。
末尾のアルファベットの意味
| 接尾辞 | 意味 | グラボの例 |
|---|---|---|
| XTX | 同世代・同グレードの中で最強を表す。 | RX7900XTX |
| XT | 同世代・同グレードの中で性能が高いことを表す。 | RX9070XT, RX7900XT |
| 無印 | 基本モデルであることを表す。 | RX9070, RX9060 |
例えばRX9070XT > RX9070や、RX7900XTX > RX7900XTといった序列だ。接尾辞には他にも「GRE」などがあるが、気にする必要はない。基本的にはXTか無印から選ぶことになる。
イメージとしては、NVIDIAのTiに対応するのが、RadeonのXTだと考えて良い。
AMD RadeonとNVIDIA GeForceとの型番比較
Radeon RX9000シリーズの命名規則と性能は、NVIDIA GeForceと対応するようになり、消費者としては比較しやすくなった。
| クラス | AMD Radeon | NVIDIA GeForce |
|---|---|---|
| ハイエンドクラス | – | RTX5090 |
| ハイクラス | – | RTX5080 |
| ミドルハイクラス | RX9070XT | RTX5070Ti |
| ミドルクラス | RX9070 | RTX5070 |
| エントリークラス | RX9060XT | RTX5060Ti |
| エントリークラス | RX9060 | RTX5060 |
| ローエンドクラス | – | RTX5050 |
例えば、RX9070XTの競合はRTX5070Tiであることが、型番から簡単に分かる。
›NVIDIA製グラボの型番の意味や見方を解説
具体的な性能差はベンチマークスコアで把握できる
RX9060XTよりRX9070XTの方が高性能だと分かったり、RX9070XTとRTX5070Tiが対応関係にあることが分かったりしても、それだけでは具体的な性能差までは知ることができない。
グラボ同士の具体的な性能差は、ベンチマークスコアで把握できる。ベンチマークスコアとは、特定のベンチマークソフトを使い、負荷をかけて処理を行わせることで、グラボの性能を数値で算出したものだ。
ベンチマークスコアを見れば、例えばRTX5070TiよりRX9070XTの方が高性能だと分かる。全ての用途においてRX9070XTが優れているという保証はないが、RX9070XTの方が高いパフォーマンスを発揮できることが多そうだ。
具体的なゲームやソフトでのパフォーマンスを知りたいなら、「RX9070XT ◯◯」のように個別に検索しよう。
AMD製Radeonグラボを選ぶ手順
型番の意味さえ分かれば、BTOでどのモデルを選ぶかを簡単に決めることができる。いちいち性能を調べなくても、型番から判断できるからだ。
- 最新のRX9000シリーズを選ぶ
- 解像度に合わせて候補を絞る
- ベンチマークと価格を見ながら1つに決める
最新のRX9000シリーズを選ぶ
Radeonが評価され始めたのは、RX9000シリーズが発売されてからだ。RX9000シリーズはそれまでのRX7000シリーズと比べて、多くの性能が大幅に向上している。
今まではBTOでもRadeonの扱いはほぼ0に等しかったのが、RX9000シリーズの発売以降、Radeonを扱うようになった。しかもおまけ程度ではなく、モデルを幅広く展開している。
そういった流れもあり、RX7000シリーズ以前のRadeonを選ぶ意味はほぼない。最新のRX9000シリーズを選ぼう。
解像度に合わせて候補を絞る
| グラボ | 用途 |
|---|---|
| RX9070XT | WQHD~4Kゲーミング |
| RX9070 | WQHDゲーミング |
| RX9060XT 16GB | WQHDゲーミング |
| RX9060XT 8GB | フルHDゲーミング |
| RX9060 | フルHDゲーミング |
自分がゲームをプレイしたい解像度に合わせたグラボ選びをすべきだ。
例えばフルHDでゲームをしたいなら、RX9060XT 8GBかRX9060を選べば良い。逆に言えば、フルHDでゲームをするのにRX9070XTは必要ない。性能の無駄だ。
プレイしたいゲームによっては「RX9060でもWQHDが可能」といったケースはあるが、汎用性で見たときは以上の表のようになる。ゲーミングPCは汎用性が重要だ。
ベンチマークと価格を見ながら1つに決める
| グラボ | 価格 | 参考 |
|---|---|---|
| RX9070XT | 97,430円 | RTX5070Ti:125,800円 |
| RX9070 | 88,980円 | RTX5070:82,980円 |
| RX9060XT 16GB | 56,480円 | RTX5060Ti 16GB:71,800円 |
| RX9060XT 8GB | 41,850円 | RTX5060Ti 8GB:55,655円 |
| RX9060 | – | RTX5060:45,800円 |
ここまでで候補が2~3つに絞れているはず。あとは各種ベンチマークと価格を見ながら、1つに絞り込めば良い。自分がプレイしたいゲームのベンチマークは必ず見ておきたい。
まとめ:型番の意味を知って、スムーズなゲーミングPC選びをしよう
この記事では、AMD Radeonグラボの型番の意味や見方を解説した。
- AMD Radeonグラボの型番は、「シリーズ」「世代」「グレード」「接尾辞」から構成されている
- RX9000シリーズでは、型番の構成がNVIDIA GeForceと統一された。両者の比較が容易になった
- ベンチマークスコアを見れば、グラボのおおよその性能が分かる
型番の意味を知っておけば、グラボのあたりをつけやすくなる。自分の要望にあったグラボを最初から絞り込めるので、グラボ選びの手間が減るのだ。
グラボの型番の意味を知り、スムーズなゲーミングPC選びをしよう。
